第五話「天才料理人シロ 料理を試される」(2/2)
5章 料理鬥爭杯篇
「ここ數日お前を見ていた」
スープの出汁を取っていたら、ギルさんが話かけてきた。
岩石に腰をかけて、じっと僕を見つめている。
「お前は優れた料理人だ」
「あ、ありがとうございます」
「ただ、それを確信まで持っていきたい」
「確信ですか……」
「あぁ、お前は村の奴らを基準に料理を作っているな?」
「基準?」
「つまりだ。料理をする際、配分を質より量としている」
ギルさん、鋭いな。
村の皆は、腹が空くと狂暴になりやすい。できるだけ腹がふくれるような料理を心掛けていた。味は美味しく、ただし最低ラインの美味しさだ。村の乏しい食料事情では、味と量を両立させるのは至難の業だから。
「さすがです。村の人達は、食慾旺盛でとにかく量が必要でした」
「やはりな。では、今回は美食をメインに作ってくれ」
美食?
つまり美味しく作ればいいだけか、簡単だ。
いつもは腐ったもの、食べられないものを食べられるように工夫しなければならない。
このA級食材ならば、目をつぶっててもできる。
あ、違う。
これだけ厳しいジャシン軍なのだ。僕には到底考えもできない意図が隠されているのかもしれない。
美食、美食……どういうことだろう?
これだけの高級食材を使えば、簡単に【美食】なんて極められる。
ジャシン軍の試験がこんなに簡単なわけがない。
美食、美食……。
しきりに頭をひねり考えていると、
「緊張するな。気楽に考えていい」
「え、えっと……」
「ふふ、そう怖がるな。ただお前の料理の腕を知りたい。それだけだ」
「は、はい」
「ただし、手は抜くな。全力で作れ。お前の真の腕を見たいからな」
ギルさんが怖い顔で言う。
料理で手を抜く……ありえない。
力こそ正義のベジタ村で貧弱な僕が生きてこれたのは、料理ができたからだ。
料理は、僕が生き抜くための唯一の術である。料理で手を抜くことは死ぬことと同義だ。
いつもどおり。
ギルさんに言われなくてもわかっている。
下手な料理を作れば死ぬ。
だから僕は、全力を出す。
おばあちゃん、安心して。僕は死なないから。
數十分後……スープが完成した。
力汁スープではない。
美食に比重を置いたスープ、フォーティャオチァンだ。
あまりの美味しそうな香りに修行好きの戦士ですら、修行をほったらかしてやってくると言われた民族料理である。
「あ、あの、どうでしょうか?」
ギル……(內容加載失敗!請重載或更換瀏覽器)